光残る谷 / Valley where light remains

髙島 圭史 / Takashima Keishi

ルート選びを失敗した。雨に濡れた登山道で滑り落ちそうになるのを全身でこらえている時、そう思いました。
谷川沿いを下るそのルートは私の登山技術では少し頑張りを必要としましたが、山の稜線を歩いた前日とは全く違う景色があるはず、と期待させました。しかしあいにくの雨によって急な下り道はぬかるみ、手足は泥にまみれ、視界も最悪、スケッチどころではない状況でした。
予定の時刻より2時間遅れながら目的地まであと少しの地点にある谷底に降りた時、雨がやみました。雨が霧に変化して、そこに暮れかかった日の光が差し、強張った私の体をほどくような景色を見せてくれました。

*作品名、作家名の表記について、webで表示できない文字には常用漢字を当ています。