生霊・六條御息所 / Living spirit: Rokujo no Miyasudokoro

高橋 天山 / Takahashi Tenzan

いはゆる執着心を置き捨てることが出来ぬまま生きる、あるいは死ぬ、ことがそう珍らしくもないのが憂き世というものでありましょうか。源氏物語に登場する六条御息所は高貴な出自故に光の君を許すことはできても、おのれの自尊心を鎮めることは出来ず、生霊と成り果て、ついには葵上をとり殺す。しかも“無意識のままだった”と言うのですから、いやはや底知れぬ闇と言うより他ありません。

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