御来光に浮ぶ / Mountain at sunrise
下田 義寬 / Shimoda Yoshihiro
高層の雲霧が染まりはじめたかと思うと、またたく間に山頂の縁に陽がさし、そこから天地の境を分けるかのように深遠で荘厳な御来光が出現した。昔から人々が信仰登拝し崇めて来た富士の気韻に魅せられ、その霊気に包まれる想いに、深夜の登山行、つらい寒さを一瞬に忘れさせてくれる。山は人間の時間とは異なった時間帯をもって直立する。近頃私は画家として自分ひとりでものを生み出す苦しみから逃れ、反省の矛先を逃れている自覚があり、はがゆさを感じています。この心洗われる想いとその体験が甦り、内奥から湧きあがってくるものをふるいたたせてくれ、自然界の不可思議で厳粛な営みへの畏敬の念は深まり、この作画に向わせてくれた。
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