Q 日本画と油絵などの違いは何ですか

日本画Q&A

公開日:2021.12.28

A 

 大変むずかしい問題です。

 油絵は、昔、例えばルネッサンスの頃(十五~十六世紀頃)物や人をそこにいる様に描けることが主流でした。その様な画風は宗教的なテーマや物語(キリストの生涯など)を描くことで教会が一般の人達に信仰の道を教えることに大きな力を発揮しました。十八世紀~十九世紀頃、印象派の様に光や影で美しい画面を表わす作品が生まれ、絵で大事なのは物語よりむしろ、絵でなければ表現できない構成(組み合わせ)だという考えが生まれ、写真が発明されて、それまで絵が背負っていた事実を記録する役目が不要になると、「構成」や人々の心の深い所にある意識などを視覚化しようとする運動が始まります。ピカソやブラックなどの立体主義や、モンドリアンやミロやクレーといったアブストラクト(抽象主義)、ダリの様なシュールリアリズム(超現実主義)が主流となります。

 一方、日本画は初めの頃から写実よりもむしろ心の中の思いを視覚化しようと考えていました。奈良時代の仏画はキリスト教の絵と違って、あくまでも拝む為のもので物語とか、記録など全く考えていません。写実より、むしろ抽象的な感覚を自然に持っていました。例えば「源氏物語」の有名な絵などを見ても、壁などはあっても天井をとりはずした様に部屋の中の人物がそのまま見える様に描いています。絵巻物では物語が丁度紙芝居を見る楽しさの様に進行しています。日本人の感覚の中には、写実的なものよりむしろ抽象的な感覚が自然にそなわっているのではないかと思います。油絵の具は、立体感などを描くのに適した材料ですが日本画の岩絵の具は平らに塗って色の美しさを強調することにむいています。日本人は絵を写実的に描こうという気持があまりなかったのでその様な材料を少しも不便と思わず何百年の間、その様な方法を使っていたのです。

 明治時代に盛んに外国の絵やその絵の具などが我が国に紹介されると、その迫力や今迄日本画になかった表現方法が驚きをもって迎えられ,多くの人がその材料を使って絵を描く様になり、優れた画家が大勢生れて、今は日本美術の大きな支えになっています。明治時代の洋画技法の導入によって、現在の様に「洋画」「日本画」という呼び方が定着しました。