初入選の思い出  番場 三雄

同人コラム
番場 三雄

公開日:2021.12.28

番場三雄 再興第64回院展 《北春の朝》.jpg 

 

二十代の頃、私の出身県新潟では院展、日展、創画会へ出品する作家が大勢おられました。私は新潟県加茂市にて表具屋に勤務し掛軸のマクリを描く仕事に就いておりました。表具屋の社長さんの薦めもあり、同じ加茂市に在住する院展作家、番場春雄先生のお宅に伺うようになりました。

 先生のご指導の中で、今も一番に思うことがあります。それは「自然から学びなさい。しっかり対象を見、何が面白いか、何を感じどの様に描くか」というお言葉です。しかし、それは大変難しくどうすれば良いか迷い続けました。

その様な中で写生を繰り返し、下図を作り院展に出品しましたが選外という結果が数年続きました。

 昭和54年、第三十四回春の院展「早春譜」が初入選させていただきました。この作品の制作過程は現在もはっきり覚えております。写生地は私の勤務する会社の隣、畑内です。その畑の脇にカラマツの木が数本3~4mの間隔に植えられておりました。その木と木の間に雪囲いの為の木材、竹竿などが積み重ねられ雨除けに錆びたトタン板が被せられていました。またその周囲には葉を落としたアジサイの枝が藁縄で束ねられています。その積み重ねられた塊が面白く全体を写生し、その後部分を詳細にスケッチを行いました。

 その取材を基にF40号に制作致しました。本画はトタン板の上に数羽の雀を配置し作品に情感が出る様、工夫を試みました。制作に迷うとすぐにその場に行き想いを回らせます。

 初入選の通知が届きその時のうれしい気持ちは今も忘れることができません。その年の六月、今野忠一先生の画塾に入会させていただきました。当時の春の院展は秋季院展(再興院展)の試作展だった様に思います。春の院展作品をもうい一度見つめ直しどの様にしたら今以上に感情が伝わるかを練り「北春の朝」と題名し、第六十四回院展に出品し初入選させていただきました。これまでいろいろな方に支えられ40年が過ぎました。これからもできる限りの精進につとめたいと考えております。