院展出品で印象に残ること

(暑い夏)
美術の秋の先陣をきって、例年九月一日から開催される院展の制作は、毎年七・八月汗を流し乍の作業となる。小生が東京芸術大学を卒業した頃の昭和三十年代、日本画研究室にいた事もあって、夏休みで空いた教室で制作したものだった。当時の冷房の無い教室は本当に暑くて、画面に汗がポト、ポト落ちて、あわてて首に巻いている手拭いでふくと、その汗の落ちた部分だけ丸く絵の具がとれてしまったりした。又絵の具をとく膠水も、ひと夏に十日間位は、暑さのあまり朝用意した物が夕方には腐りかけていた。勿論冷蔵庫もなく、唯々暑かった事だけがしきりと思い出される。やがて上野の山に蜩がカナカナと鳴き始めると出品締切り日も間近か、いつのまにか暑い夏も終わりをつげていた。